リノベる代表の山下の起業の地としてもゆかりの深い大阪。今夏、リノベる大阪オフィス、ショールームを併設する「RENOVERU OSAKA」がグランドオープンしました。築49年のオフィスビル一棟全体をリノベーションし、リノベる都市創造事業のコンセプト「まちの新しい価値になる」を具現化した本プロジェクトについてご紹介していきます。撮影:河田 弘樹
西郷 俊彦 Toshihiko Saigo
リノベる株式会社 都市創造本部 本部長 兼 関西都市創造部 部長
高橋 克彰 Katsuaki Takahashi
リノベる株式会社 都市創造本部 関西都市創造部 関西都市創造課 課長
山下 晋彦 Kunihiko Yamashita
リノベる株式会社 都市創造本部 関西都市創造部 関西都市創造課
上野 亜希 Aki Ueno
リノベる株式会社 都市創造本部 関西都市創造部 関西都市創造課
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――リノベるの「都市創造事業」について改めて教えてください
西郷
リノベるは、ミッション「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」を実現するために、顧客・社会・産業への約束を掲げています。都市創造事業は、その中でも特に「社会」に対する約束を意識し、「まちの新しい価値をつくる」不動産再生事業に取り組んでいます。
現在社会課題として「空き家」だけでなく「空きビル」問題があるのはご存じでしょうか。新しいオフィスビルが次々に誕生していることで、築古のオフィスビルの競争力が弱まり、賃料を下げざるをえない状況にあるケースも見られます。
都市創造事業では、そうした社会的な課題を解決しようと、リノベーションやコンバージョン(用途変更)の提案を通して、いわゆる「遊休不動産」の有効活用を行っています。空きビルの価値を再生するには、その建物に新たな役割を持たせることが不可欠。どんな方法で活用するのがその場所にとってベストなのか、収益性はどうかという観点で企画から、デザイン・設計・施工・運営のお手伝いまで「ワンストップ」で行っているのがリノベる都市創造事業の大きな特徴です。人が集まる楽しい場所や心地よい環境をデザインして、街に新たな魅力を生む。そうした意味で「都市」=人が集まる場所を創造していこうと取り組んでいます。
――今回「Borderless field〜境界のない場所からその先の暮らしへ」というコンセプトが掲げられていると聞きました。
上野
リノベる大阪オフィスの移転計画が生じたのを機に、大阪オフィスのメンバーで「地域に貢献できるオフィスづくりを考える」というワークショップを行いました。その時に「こんな働き方をしたい」「地域とつながりたい」という目線から生まれてきたのが、この「Borderless field」というコンセプトです。
リノベる社員の名刺はジグソーパズルの形をしているんです。
それは、お客様・パートナー・作り手がつながりながら、一緒にものづくりをしていく、大きな絵を描いていくということを表しています。
それを念頭に、地域の方々とつながりながら、自分たちの領域はここだけと決めず、境界を溶かし領域をどんどん広げていき、ひとつの大きなコミュニティをつくることを目指しました。フィールドをミックスさせることで、新しいものづくりができる場所にしたいという思いから生まれました。
――具体的にどのようにコンセプトを具現化させていったのでしょうか。
山下
まず、道を挟んだ向かいにある靭公園の緑の豊かさを「RENOVERU OSAKA」にも取り入れ、公園とまちが繋がるように建物前や屋上などを緑化しました。緑の潤いをシェアし、まちの景観に貢献できたのでは、と感じています。緑を使ったイベントやまちづくりを行なっている東邦レオ社と協業しました。同社とは今後も、まちづくり・環境づくりに関わるイベントを一緒につくりあげていけたらと考えています。
――1階にはカリモク社のライブオフィスがあるそうですね。
上野
はい。まちとの接点である1階には、カリモク社のライブオフィス「Karimoku Commons Osaka」を開き、そこに地域の方々が気軽に立ち寄れるブレッド&コーヒースタンドを併設しました。常にまちに開かれた場所を意識しています。
カリモク社のデザイナーズブランド「KNS」や家具工房の「石巻工房」を誘致して、「Karimoku Commons Osaka」では将来的に家具や遊具の開発を行ったり、合同でワークショップなどを開催したりする予定です。
ライブオフィス「Karimoku Commons Osaka」では、実際に家具に触れ、使うことで、カリモク家具の良さが伝わるような場所を目指しています。木材や林業にこだわりをお持ちの企業なので、リノベるとの協業によって相乗効果がある取り組みを進めています。
また、ふらっと入って下さった方に、そこを起点にリノベるを知って頂き、2階のリノベるショールームにも気軽にお越し頂ければと考えています。入居者どうしがコミュニケーションをとれるよう屋上も緑化してルーフガーデンを作りましたが、地域とのつながりを持てるよう、イベントを定期的に企画し、地域の方々にも利用して頂く予定です。
――4階のシェアオフィスについて教えてください。
高橋
「RENOVERU OSAKA」はリノベるだけが使うのではなく、関係する企業、新しい方々にも入居して頂くことで、何かが生まれる場所になればいいな、と考えています。
4階のシェアオフィスには、今まで住宅や建築には関わりのなかったデザインやアート、映像など、ものづくりをされているクリエイティブな企業に、コワーキングスペースには、リノベるのパートナー企業である不動産会社や工務店、設計事務所の方々に入居していただいています。
リノベるのフィールドに近い方々だけでなく、ここがものづくりの新しい拠点となるように、入居者同士の交流や協業のきっかけもつくっていきたいと考えます。新しいプロジェクトを始めたり、ビル全体で一緒に盛り上げたりするような関係性を作り上げていきたいですね。
――ショールームはどのような特徴がありますか。
上野
2階はリノベーション空間を再現した体験型ショールームになっています。最新のloT機器を連携させたスマートホーム体験できるのが特徴です。
リノベるでは最新のloT機器を積極的に取り入れて、お客様にお勧めしています。住まいをスマートホーム化することで、「アレクサ、おはよう」の一言でカーテンが開き、照明が点灯、ニュースと今日の予定が読み上げられ、テレビが点きます。空調やお風呂の給湯もコントロールできます。
山下
オフィスデザイン提案の際にこうした機能をご紹介できるので、ショールームだけでなく私たちの新オフィスでもスマート化を進めています。「暮らし」とひとことで言っても住まいの他、いろんな場面があります。ショールームは住まいの提案の場ですが、都市創造事業部では「働く」「遊ぶ」「憩う」なども暮らしと捉えています。
例えば4階の私たちのオフィスやシェアオフィスも暮らしの一部として見ていただきたいなと。私たち自身の働く環境を、素敵な暮らしの場として訴求できればと思います。
――今回のプロジェクトを通じて、特に手ごたえを感じたこと教えてください。
山下
普段はお客様の要望にどう応えるかを考えていますが、自分たちのオフィスなので、自分たちがどんなものを目指しているのかというところに立ち帰れる良い機会となりました。形としてどういうものをつくりあげていくのがいいのか。
例えば、建物全体を通して間接照明を設けたことで道路からの視認性が上がり、まちとのつながりが生まれたことなど、多くの気づきがありました。つくりあげたものをいい形で使って頂くには、自分たちにとってもいい環境をつくりあげることが大切だと感じました。
オフィスや住宅が混在する緑の多いエリアで、その環境の良さを建物に集約できないかとも考え、緑化も含めて、立地に合った建物のデザインに仕上げています。
西郷
また、自分たちのオフィスをフリーアドレス(※)化したことは良かったですね。今までは物が溢れる中で仕事をしている社員も多く、当初は不安の声があちこちから挙がっていましたが(笑)、席の固定がなくなったことで見事に解消され、スッキリしたオフィス環境が実現しました。
※フリーアドレス:固定された自分の座席を持たず、業務内容に合わせて就労場所を選択できる形式のこと
フリーアドレスによって、働く場所としては屋上、大きなバルコニー、ショールームのリビングやキッチン、1階のコーヒースタンドなどほっとできる場所があちこちにあり、個々のメンバーは自分の居場所を見つけながら働き方を工夫しています。他の階に入る企業の方々も、想定されてる以上に選択肢の多い、多様な働き方ができているのではないかと思いますし、実際そのような声も聞こえてきています。
――今後「RENOVERU OSAKA」をどのような場所にしていきますか。
山下
ものづくりに携わる人が「ここに来れば何かが生み出せる」と思って頂けるような拠点にしていきたいですね。ものごとが成熟していくためには、いろいろな人が関わることが大切ですが、人が集まっても何もしなければ、成熟する機会は得られないでしょう。ハード面の仕掛けだけでなく、イベントなどソフトな面での働きかけも行なっていきたいです。
西郷
「RENOVERU OSAKA」で出会ったさまざまな方々と一緒にものづくりを行っていて、そうですね、5年後、10年後には、ここで生まれた新しいプロダクトや新しいサービスを社会に提供して、「かしこく素敵な暮らし」の発信地になっていると確信しています。
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