前回記事に引き続き、自社の成長を牽引してきたお二人に「組織を強くするために意識していること、環境づくり」について伺いました。
お話を伺った人
聞き手
松井敏行 リノベる㈱ 社外取締役
三井物産では入社以来、金融事業、ICT事業に従事。近年はFintech・EC分野の投資、新規事業立ち上げに携わる。2019年リノベる㈱の社外取締役に参画。
杉谷武広 リノベる㈱ 執行役員
三井物産ではメディア、テクノロジー領域での事業開発、戦略投資をグローバルに展開。米ビジネススクール所属、米系ベンチャーキャピタル/アクセラレーター(在サンフランシスコ)を経て、2017年リノベる㈱に参画。
松井
お二人の会社ではどのようなタイミングで、上場を意識されていたのでしょうか。
長澤
メルカリの場合、上場自体は目的ではなくて。その時々の資金調達でどういう方法がベストかを考えていて、常に上場は1つの選択肢として準備を続けていました。結果的にそれがいい準備運動になり、会社が強くなったように感じています。
金坂
マネーフォワードの場合は、絶対に2017年に上場しようと前年から動いていました。予定通り2017年に上場できたんですけど、その時はまだ赤字で事例も少なかったですし、SaaSやFinTechも全部初物だったので、関係者の方に理解していただけるよう丁寧に説明を尽くした記憶があります。
また、上場後も二ヶ月後にM&Aを行ったり、増資をしたりとチャレンジをし続けていました。同じことだけやっていると、高い成長率は維持できないので、新しい仕掛けをどんどん取り組もうと。上場後、守りに入って短期的な利益を出しに行くのではなく、しっかり中長期の成長を目指した投資を行いつつ、一方で全体として財務的な規律も維持する。つまり見極めをしっかりすることに注力しています。
松井
お二人を見ていると、投資家に対して理解してもらうためのタフネスさが共通点じゃないかと個人的には感じています。
長澤
会社の見せ方は特に大切です。リノベるだと「なんで普通の不動産事業と違うのか」という点を角度を変えてステークホルダーに伝えることが、今後ますます求められるのではないでしょうか。
松井
組織として、人数の壁といった視点で伺いたいのですが。メルカリの従業員数は今どれくらいでしょうか?
長澤
今2,000人くらいですね。2015年に私が入社したときは100人くらいでした。上場してから、一気に採用が加速した印象です。
金坂
マネーフォワードは上場した時に200人ほどでしたが、今600人です。上場してからグループ会社も8~9社作りました。新しく組織やチームを作って、グループ全体のミッションから外れない中で、ミッションを定義し新しい事業に取り組むことでベンチャー精神を失わせない、というのはありますね。
会社自体が大きくなってもベンチャーマインドを意図的に作ることで、そこにいるメンバーはベンチャーを体験できる。一つの会社がどんどん大きくなる中で、もっと小さい組織でやりたい人も当然いるので、そこはバランスだと思います。
長澤
リノベるで今後そういう動きが出てきてもおかしくないですよね。
金坂
社内に起業家、経営者が増えて、それが組織を強くするというのもありますね。会社でなくとも新規事業など、ケースバイケースだと思いますが。
長澤
エンジニアを採用する際も、なるべく自由度のある魅力的な環境を用意できるよう意識しています。メルカリは「Go Bold 大胆にやろう」をバリューの1つに掲げていて、トライ&エラーで大胆に攻める姿勢を大切にしています。2,000人でもスタートアップの気持ちを忘れずにいよう、というのが社員のマインドとして浸透しています。
松井
リノベるも見習って、引き続きトライ&エラーで取り組んでいきたいです。(続く)
撮影:白根美恵