【Vol.37】リノベるを“暮らし”の会社へ。経営戦略室長 杉谷武広が描く、ポストメルカリ時代のライフスタイルサービス。

2019.03.29
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【Vol.37】リノベるを“暮らし”の会社へ。経営戦略室長 杉谷武広が描く、ポストメルカリ時代のライフスタイルサービス。

リノベるの主要株主である三井物産で事業開発・ベンチャー投資に従事し、現在はリノベる執行役員として経営戦略のミッションを担う杉谷武広。その経歴からビジネス一辺倒の人間かと思いきや、実はもともと編集者志望。建築・インテリアからアート、デザイン、文学と、ライフスタイルカルチャー全般に関して「かなりのオタク」だと自認する一面も。そんな杉谷がリノベるにどんな可能性を見出し、どんな方向に導こうとしているのか。ざっくばらんに語ってもらいました。

 

 

杉谷武広 Takehiro Sugitani
三井物産株式会社入社後、一貫してメディア、テクノロジー領域での事業開発、戦略投資をグローバルに展開。米ビジネススクール所属、米系ベンチャーキャピタル/アクセラレーター(在サンフランシスコ)を経て、2017年三井物産からの出資実行を機にリノベる株式会社に参画。

スローカルチャーの可能性

新卒で三井物産に入社してから一貫してテクノロジー領域に身を置き、国内外の事業開発や投資に携わってきました。途中、アメリカのビジネススクールに留学した後に、サンフランシスコの米系ベンチャーキャピタルで修業する機会を得ました。

2012-2013年頃の当時、AirbnbやBlue Bottle Coffeeに代表されるようにテクノロジーとライフスタイルの融合が盛り上がるタイミングで、ヒッピー文化やシェパニーズに代表されるオーガニック運動から脈々と受け継がれるオルタナティヴ/サステイナビリティの視点であるとか、スタートアップ、イノベーション、DIY/クラフト/メイカー、ソーシャルインパクト、デザインシンキングといったキーワードが盛り上がっていました。自分が働いていた環境も、倉庫をリノベーションしたコワーキングスペース。WeWorkのような面白い空間を手がけるプレイヤーがどんどん出てきていましたね。Twitterがサンフランシスコのスラム街にオフィスを構えてその街自体を変えていったり、Squareがもともと市庁舎だった建物をリノベーションしていたり。そんな空気を肌で感じることができました。

2013年に帰国してからは元の部署に戻り、引き続きTech領域の事業開発に携わりました。当時チームで掲げていたテーマが、ライフスタイル × テクノロジー。いわゆる衣食住をTechでイノベートするという観点ですが、自分の場合はそこにもう一つ「サステイナビリティ」という視点をかけ合わせて考えていました。ライフスタイル × テクノロジー × サステイナビリティ です。スローフード、スローファッション、スローリビング。大量生産・大量消費を前提としたファストサイドの考え方ではなく、スローサイドのイノベーションにこそ可能性があると。リノベるへの投資も、まさにその文脈です。

 

 

 

ポストメルカリ時代に、何が起きるか?

もともとライフスタイル・カルチャー全般への関心が強く、自分で言うのもなんですが、ある意味オタク(笑)。それで学生時代には編集者を志していたのですが、そうしたバックグラウンドがあるためか、日常のなかにコンテクストを探し、世の中の流れを読むのが好きなんです。要は「ポスト○○」を考えるということ。編集も投資・事業開発も同じだと思うのですが、社会の文脈をどう見立てるかだと思うんですね。

例えば、日本にメルカリが出てきて考えるのは、ポストメルカリで何が出てくるのか。メルカリで売買される対象はますます広がってきて、もはや肌着なんかも普通に売り買いされるようになってきている。「中古」に対するハードルがどんどん下がっていて、実はこのメルカリの先に、いよいよ日本人の新築神話の崩壊があるんじゃないかと。

そういう意味でも、時代はファストからスロー、サステイナビリティサイドに流れていると感じます。ファッションの世界でも、まずファストファッションの登場でデザインが民主化しました。しかしそれによって、アメリカ人が年間48着もの服を買っては捨てるといった状況が生まれてしまった。そしてカウンター的に、本当にそれって幸せなのか? 価値があるのか?という流れになっている。これはファッションに限らず、究極的には暮らしの領域全般において共通している方向性だと思います。まさに、リノベるがミッションで謳っている「かしこく素敵に」という方向性です。

なぜ、リノベるを選んだのか?

こうした社会のコンテクストから見ても、リノベーション市場のポテンシャルは非常に大きい。では、数あるリノベーション事業者の中で、なぜリノベるを選んだのか。自分としては2つあると思っています

1つは、「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に」というミッションが示すように、リノベるが住まいにとどまらず「暮らし」を見ている会社だというところ。そしてもう1つが、テクノロジー活用への意識の高さ。さらに言うならば、実業とTechとの絶妙なバランス感覚です。

そもそも不動産領域は、テクノロジー活用が特に遅れている産業だと言われています。他の産業に比べて就労者の平均年齢は高く、IT活用も遅れているとされています。であれば、他の産業ではすでに当たり前のものとなっているテクノロジー活用を、業界に先んじて進めていくことで、伸ばせる余地はまだまだ大いにあるなと。

一方で、この業界においてピュアTechで勝つのは非常に難しい。アメリカもそうなのですが、ネット完結型でマッチングのみをやっている会社は結構あります。でも日本において、それで本当にスケールするのか甚だ疑問でした。

というのも住宅産業の場合、ほとんどの顧客が「初めて家を買う方」になります。勝手が分からない上に、パートナーと話したり親に相談したりと、一人でパッと意思決定できるような性質のものでもない。それをピュアにネットだけで自己完結させることができるかというと、いずれ近いことができるようになるかもしれませんが、現状を見る限りまだまだ遠いと思います。

そういう意味で、実業。顧客に対して専門の担当者がついて、しっかりとプロジェクトマネジメントしていくことが必要。リノベるのリノベーションサービスの仕組みはまさにそれです。Techに寄りすぎてヒューマンタッチを軽んじるのでもなく、過度に人に寄りすぎてTechを疎かにするのでもないという、そのバランスのとれたサービス思想こそが、リノベるの強みの一つだと考えています。

Living tech conferenceにて海外とのオンラインセッションも。

リノベるを、「暮らし」の会社にするために

今、リノベるでは経営戦略を担当していますが、リノベーションサービスのオーガニックな成長とは別に、非連続な成長を実現することが自分に課せられたミッション。住まいに留まらない暮らしの会社として、継続的な業態進化に向けた投資なりM&Aなりを、積極的に仕掛けていきたいと考えています。

究極的には暮らしに関するものすべてに関わりたいと思っています。ただ、まずは空間軸での領域拡張になるでしょうね。最近は住まいと働く場所とがマージしたような新しい空間なども生まれてきていますが、そうした空間の利活用の幅を広げていくところから始まり、中古物件の流通をより加速させる仕組みづくりであったり、住んだあとのコミュニティに関わることであったり。コンテクストを捉えた、連続性・必然性のある打ち手をと思っています。

例えば、Airbnbが完全に一般化したアメリカでは、すでにAirbnbのクオリティでは満足できない人たちが出てきています。そうしたユーザーに向けて、Airbnbの中から5つ星・4つ星クラスの物件を集め、そこにそのエリアのクラフトコーヒーや気の利いたアメニティを置いたりして、ちょっとしたエースホテルのようなハイエンドの空間として提供するサービスが出てきているそうです。あるサービスが普及すると、その上にまた新たなサービスが生まれてきてどんどんリンクしていくものなんですよね。リノベるのリノベーションサービスがより広まっていった先、その上にどんなサービスができるのか……という観点から、さまざまな仕込みをしていこうと考えています。

とはいえ、何でもいいから手を出そうということではもちろんなく、軸となるのはあくまで「かしこく素敵に」の考え方。暮らしの領域のあらゆるものに関して、住まいでいうところのスクラップ&ビルド的発想が前提となっているものを探し、それをよりサステイナブルな方向にリデザインしていくイメージです。

今、このマーケットはものすごい激動期の最中にあって、あと5年もすれば、本当に新築と中古が正反対になっても全くおかしくないと思っています。さらに言うと、アメリカや中国の方と話をしてみると、どちらの国にもリノベるのようなビジネスモデルは存在していないと。アメリカ・中国のサービスが日本に入ってくるのはよくありますが、逆にリノベるという日本独自のモデルを世界に輸出するという可能性もあるんじゃないかなと。「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に」し、それをもって世界の暮らしも変えていく。究極的には、そんな絵も描いています。

 

 

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