2020年6月、新たに社外取締役としてリノベるに参画した小川智也氏。弁護士であり、DeNAやアカツキといった上場企業でコーポレート業務全般を担ってきた経営のスペシャリストとして、リノベるにどんな可能性を感じているのか-。代表の山下がお話を伺いました。
(撮影:白根美恵)
■プロフィール
小川 智也 Tomoya Ogawa
リノベる株式会社 社外取締役(株式会社アカツキ Head of Global Game Expansion)
大学卒業後、 米系コンサルティングファーム勤務を経て、法律事務所にて弁護士として企業法務、M&A、倒産・事業再生案件等に携わる。株式会社ディー・エヌ・エーでは執行役員経営企画本部長としてコーポレート業務全般に従事。
2014年より株式会社アカツキ 取締役CFOとしてコーポレート部門全般・海外投資に携わり、2020年5月よりHead of Global Game Expansionに就任。2020年6月、リノベるに社外取締役として参画。
山下
小川さんとのご縁は、もう4年になるでしょうか。とあるカンファレンスで小川さんが登壇されているセッションを、ワクワクしながら拝見したのを覚えています。そのあとの会食でたまたま一緒になり、ご挨拶したのが初めてでしたよね。ここ1年ほど定期的にディスカッションの時間をとっていただくようになり、たくさんのアドバイスや示唆をいただいています。そんな小川さんと、これからリノベるの仲間としてご一緒できることが夢のようです。
小川
ありがとうございます。素晴らしいご縁をいただいたと感じています。
山下
今日はまず、僕の方から小川さんの魅力を語らせていただきたいなと(笑)。僕からみた小川さんは、一言でいうと“サムライ”のような人。間合いのとり方が上手で、一本折れない芯を持っているというか、覚悟が決まっている方という印象です。物事を俯瞰できる大きな視点と、絶妙の間合いで人や物事をモデレートする力をお持ちで、まさに経営企画のプロフェッショナルだなと。
その上で、僕は小川さんの魅力は“ギャップ”にあると思っていて。というのも小川さんはビジネスプロフェッショナルでいらっしゃる一方で、実は空手家として、今もずっと武道を続けていらっしゃるんですよね。お寺での稽古会を開いておられたり、ロシア発祥の格闘技を修めようと実際にロシアに合宿されたり、本気でやってらっしゃる。
ビジネスと武道という二面性もそうだし、例えば問題解決と問題提起とか、カルチャーとビジネスとか、グーッとフォーカスした視点とスッと引いた視点とか。ギャップのあるAとB、その両方を持ち合わせている方ってなかなかいないんですよね。でも小川さんは、まさにその両方を持っている。一つの面だけではなく、それとは真逆にあるようなもう一つの面をお持ちだというところが、小川さんの魅力だと思うんです。
小川
山下さんも、スタートアップ経営者とタッチラグビーの日本代表という二つの顔を持ち、両方を真剣にやっていらっしゃいますよね。そのスタンスに私も刺激をもらっていますし、シンパシーを感じている部分です。
山下
小川さんは、もともとリノべるにどんな印象をお持ちだったんですか?
小川
個人的に、家や建築を見るのが好きなんですよね。「リノベる。」のリノベーション事例もよく拝見しているのですが、センスがいいしデザインも素敵で、見ているだけでワクワクします。そしてもう一つ、リノベるが掲げている「社会課題を解決する手段」としてのリノベーションにも大きな意義を感じます。取り組んでいるテーマ自体に共感していますね。
僕自身もそうですし友人や経営者仲間をみても、いわゆる昭和的な価値観とは一線を画している方がほとんどです。サステイナブルなモノ・コトへの感度が高く、ライフスタイルも多様で、少なくとも同じ会社でずっと働き、ずっと同じところに住んで……という方はほとんどいません。
例えばアカツキ社のメンバーも、これまで会社から2駅くらいのところに住んでいたのが、最近少し離れたところに引越しをして、同じ家賃でより広い住まいを選んだりしています。あるいは、地方で暮らしてリモートワーク中心に仕事をしようかというメンバーもいる。今回の新型コロナも一つのターニングポイントになるのでしょうが、一人ひとりが自分らしいライフスタイルを考えるという動きは、スタートアップのような比較的新しい会社で働いている人たちの中では、明らかに広まっていますよね。人生の選択肢について、特に若い世代は柔軟に考えている印象もありますし、こうした価値観がこれからの時代のスタンダードになっていくと思います。
リノべるの事業はこの変化とともにあるものだと思いますし、そこは個人的にも興味があるところです。
山下
おっしゃる通りです。リノべるを立ち上げて10年になりますが、一部のこだわった方のためのものだったリノベーションが、少しずつ社会のもの、みんなのものになってきているのをまざまざと感じています。
そして経営の観点でも、今がまさに変化のタイミングだと感じていて。この10年が0から1を生み出すフェーズだったとしたら、これからは、その1を10にしていくフェーズなんだと。
そう考えたときに、リノべるのミッションである「暮らし」というテーマの幅広さは、ある種の弱点にもなり得るなと思ったんです。あらゆるものが「暮らし」の範疇に収まるから、どうしても何かにフォーカスしづらくなってしまうんですね。そんなときに、経営企画というポジションで小川さんが務めてこられた、全体を俯瞰して「そもそも我々は何がしたかったのか?」と引き戻してくれるような役割が今まで以上に重要になってくると思っていて。
もちろん外部のコンサルタントに相談するというやり方もあると思うし、実は過去にそういうお話もあったんですが、どうしても“空中戦”タイプの方が多い印象なんですね。状況を整理して戦略戦術を描いたらそれで終わりで、地上に降りて一緒に“接近戦”に臨むことはないという。それだと、こちらとしても指示されているだけの関係性に違和感を感じて、結局うまくいかないだろうなと思うんです。
でも、小川さんはそうではないやり方ができる人。先ほど小川さんの魅力はギャップにあると言いましたが、柔らかい雰囲気でいろんな人の声を聞きながら全体を整理することもできれば、ここぞというときにグッと寄っていくこともできる。現場におりて自ら動くことのできる強さを持った方だと感じていて、小川さんならば、僕たち経営陣はもちろん、現場のメンバーたちの心を掴み、動かすことができるだろうと確信しています。
小川
先ほどお話した社会的意義もそうですし、マーケットのポテンシャルとしても、リノベーションには大きな可能性があると思っていて、その中でもリノべるはその可能性をさらに広げていける立場にある会社。世の中に大きなインパクトを出していけるチャンスがあるなと感じます。
そこにどのような貢献ができるかなと考えたときに、山下さんがおっしゃったような会社の戦略であるとか経営企画的な部分。もちろん業界が違うので当てはまらない部分は大いにありつつも、逆にちょっと素人だからこそ引いてみたときに疑問に感じることや、「他の業界だったらこういうふうにやっているけど、リノべるではできないのか?」という問いかけだったり、そこで新しい気づきを提供できたらというのは一つありますね。
もう一つが、リノべるという会社のあるべきガバナンスの形ですね。株主にとって、あるいは働くメンバーにとってどのような形であるべきなのかを、一緒に考え、作っていくことにも貢献できたら、というのが大きく2つ考えているところです。
山下
ステークホルダーとの関係性のあり方も、この10年、しっかりとデザインしたと言い切れない状態で走り続けてきたのが実情だと思います。掲げたミッションに向かって走ることはブレずにやれている自信がありますが、「会社としてこうありたい」「こういう経営をしたい」というようなことはあまり口にしたことがないかもしれない。今後、その説明責任を果たしていかなくてはいけないと痛感していて。小川さんはまさにそこを実践されてきた方なので、頼もしいです。
ガバナンスのあるべき形と言ってくださっているのがまさにそうで、絶対の正解があるわけではないんですよね。会社として、攻めと守りのバランスをどう配分するのか。会社によって、事業家によっていろいろな考え方がある。
小川
会社のフェーズによっても変わりますよね。リノべるも、今のこの規模になったからこそ考えなくてはいけないことがあるし、株主の多様性が高まったらまた変わってくるところもある。そうした将来も見据えた上で、今のフェーズだったらどうあるべきかを考えていく必要があります。今まさにステークホルダーも増えてきているところなので、特に大事なところですよね。
山下
たしかに、「変わっていくべきだ」ということすら理解できていなかったかもしれません。その示唆が得られたのは、間違いなく小川さんのおかげですね。
小川
今のリノべるのフェーズは、人材の厚みも増してきて、ベースとなる事業の成長軌道も見えてきて、まさにいろんな可能性が広がるタイミングだと思います。先ほど、「1を10にしていくフェーズ」と仰っていましたが、まさにそうで。効率的にうまくフォーカスできたり、先を見据えて意識的にアクセルを踏んだり、やり方によって成長の角度や成長スピードが変わり、“どこまでたどり着けるか”を大きく変えることができるタイミングなんです。やり方次第で、1を10にも20にもできる。
0から1を生み出すフェーズは、極端な話、いくら考えたところで必ず実行できるわけではないじゃないですか。目の前のこと、生き残ることに必死だし、リソースの問題でやれることも限られているし、やらなければならないことをひたすらやるのみなんですよね。
私がアカツキに入った当時はまだ30人規模の組織で、とにかく目の前のタイトルに全力で取り組んでいました。それからヒットタイトルが出て、上場して……と、ある程度のフェーズに入ったからこそやれることが、やっぱりその都度あって。振り返ると、ポイントポイントで成功も失敗も数々あります。
その経験をもとに、もちろん全てがそのまま当てはまるわけではありませんが、リノベるの成長角度やスピードを後押しすることができるはずだと思っていて、それによってさまざまなステークホルダーにプラスの結果を出せるのだとしたら、経営に携わる者として何よりのやりがいです。
山下
客観的に、これまで関わってこられた会社とリノべるに、共通していると感じるところはありますか?
小川
そうですね、私がお会いしたリノべるメンバーの皆さんに感じたのは、一人ひとりが業務に対して真剣に打ち込んでいて、“やりきる”というところ。ある種のプロフェッショナリズムを、皆さん持っているなと感じています。DeNAもアカツキもそうでしたし、周りで伸びている会社をみていてもそうですが、結局、スタートアップの世界は最終的にやり切れるかどうかで決まります。その点、リノべるは皆さん熱意を持ってやられているので、非常に力強い会社だと感じますね。能力や経験ももちろん重要なファクターですが、一番大きいのはやはり熱量。会社のスタンスや集まっているメンバーの熱量こそが、最も大きな変数だと思います。
山下
熱量はもう、僕も含めて。掲げているミッションは、僕らが特に自信を持っているところなので。
今のお話を聞いて改めて、さまざまな経験を積み重ねてこられたからこその、小川さんの厚みを感じました。熱量って、例えば腕立て伏せを毎日つづければ必ず腕は太くなるんだけど、みんなどこかで諦めてやめちゃう。それを続けられるかどうかは、熱量次第ですよね。僕も、垂直跳び、4年前より今の方が跳べる自信があります。46歳、今朝も測ってきたんですけど、まだ伸びてるんですよ(笑)。それが自分の自信になってる部分が間違いなくあって。しんどくても続けることって誰もができることではないと思っているので、そこはこだわり続けたいですね。
山下
最後に、小川さんの住まいや暮らしに対するこだわりや夢を伺ってもいいですか?
小川
そうですね、私もよくいつか住みたい家を夢想するんですよね。いずれは自然の中で。“和”が好きなので、古民家のリノベーションだったり、モダンだけど和のテイストが感じられる空間だったり。いつか、田舎の緑の豊かなところに居を構えてというのも。それから、自分の道場をつくるのも一つの夢ですね。
山下
道場! いいですね。古民家をリノベーションして、道場併設。
小川
新型コロナを機に、都市部にこだわらず自分らしく過ごせる場所が欲しいといニーズはこれからますます大きくなってくると思うので、私自身も夢想といいつつ、そう遠くないうちに実現しそうな気もします(笑)。これからの時代、自宅で働く人も増えていきますよね。住まい自体にもいろいろな選択肢が増えてくるだろうなと思うし、自分としても従来の価値観に縛られない選択をしたいと思っています。
山下
ぜひ実現させましょう! 小川さん、改めてこれからよろしくお願いします。
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