【Vol.47】「多能工」として現場に立つこと2年。職人不足解消に向けたリノベるの挑戦!

2020.02.13
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【Vol.47】「多能工」として現場に立つこと2年。職人不足解消に向けたリノベるの挑戦!

「多能工」とは複数の作業や工程を遂行する技能を持った施工担当者のこと。建設業界では職人不足が深刻化しつつありますが、それを改善するべく、リノベるでは、2017年に多能工育成プロジェクトをスタートしています。多能工としてさまざまな課題に取り組む上島拓真と、育成プロジェクトを指揮する安江浩に、プロジェクトの経緯や思いを語ってもらいました。

 

■プロフィール

上島拓真 Takuma Ueshima
リノベる株式会社 リノベーション本部 首都圏設計・施工部 施工技術課所属
2017年入社。ライフスタイルコーデイネーターを経て、多能工育成プロジェクトに参加。約5ヶ月の研修を経て、大工仕事を中心に解体からクリーニング、アフターサービスまでのあらゆる工程、職種のサポートを行う。4月に入社する技能実習生の育成も担当。

 

安江浩 Hiroshi Yasue
リノベる株式会社 リノベーション本部 首都圏設計・施工部 部長
住宅設計、オフィス設計等を経験後、2012年にリノベるに入社。ライフスタイルデザイナーとして案件担当を経験した後、管理職となる。設計部門の組織拡大やオペレーションの標準化を進めながら、施工部門を立ち上げ。現在は東日本の設計・施工部門の部長として個人住宅リノベーションの設計施工を管理。

 

工事を滞らせずに円滑化するのが任務

多能工になる前は、ライフスタイルコーディネーター(営業職)だったそうですね。
「新しく多能工育成プロジェクトを立ち上げる。多能工にならないか」と転身の誘いがあったのは、2017年に新卒で入社し、研修後に営業職として配属された3ヶ月後で、全くの新人でした。

大学は文系ですし、職人や技術者という職種になると考えたこともありませんでしたが、まず、単純に面白いと感じました。お客様に中古購入+リノベーションをご提案するにあたり、工事内容や現場を熟知した上でお客様と向き合えることが自分のキャリアにとってプラスだと捉えたからです。
現場で培った建築知識を持つことで、幅広い知見や視点でものづくりに向き合える点、自分の言葉で自信を持ってリノベーションについてご提案できる点に、強く惹かれました。職人不足の状況に貢献していけることも大きな魅力でした。


現在、多能工としてどんな職務を担っているのですか。
職人さんのサポートで工事を行ったり、最近では現場監督の補助業務も手掛けたりするようになりました。そうした業務を通じて、工程を滞らせずに円滑化するのが任務です。あちこちの現場に行きますよ。1ヶ月同じ現場で下地貼りから造作まで手掛けることもあれば、1日だけの単発仕事もあります。

担当する範囲は、解体から物件引き渡し、アフターサービスまで幅広く、「何でもやっていこう」という意識で全工程をカバーするようにしています。職人さんが行う専門的な工事を手伝いながら、徐々に自己の技術レベルを向上させています。

 

多能工としてだけでなく、多能工を育成する業務も担当しています。
最初の年、多能工は私1人だけでしたが、現在は2名体制で行っています。今後さまざまな現場で活躍できる多能工を何人も育成していくために、その手順を実体験にもとづきアップデートしていくのも、私たちの大切な任務です。現場で重宝されるのはどんな職務なのかを日々探究し、今後の多能工の育成に役立てようと模索しています。

春に来日する4人の技能実習生の育成も担当しているそうですね。
昨年10月末にベトナムで面接をし、現在受け入れの準備を行っています。本人たちは現地で日本語の研修を受け、4月から約1ヶ月の研修を経て、多能工として配属となります。全員が未経験なので、そうした点も考慮した研修カリキュラムを一から作成しています。人材育成の経験を、自分自身の多能工としてのスキルアップにつなげていきたいと考えています。

課題は「多能工を増やす仕組みづくり」

 多能工としての仕事はいかがですか。どんな時にやりがいを感じますか。
多能工になって約5ヶ月間は、ハウスクリーニングの会社に「丁稚奉公」しました。毎日のハウスクリーニング修行のおかげで、細かい箇所まで目が向くようになり、品質を見る目が養われたと感じます。
今は工程の一通りを手掛けますが、メインは大工仕事が多いですね。手掛けていて一番興味を持てるのも大工仕事です。「つくっている感」がやはり楽しいです。
良いものをつくり上げたときが本当に嬉しいですね。お客様、職人さん、現場監督と、全方位の皆さんに喜んでいただいたとき、やっていて良かったなとやりがいを感じます。

現場の職人さんはどんな方が多いですか。
一般的に「職人は恐い」というイメージがありますが、全然恐くありませんよ。むしろ逆で、やさしく職人仕事を教えもらっています。やる気のある若手が入ると、ベテランの職人さんも教えがいを感じるみたいですね。
職人さんはご自身の手掛けたものの品質にこだわりや自信を持っていて、尊敬できる方々ばかりです。でも、そうしたベテランの職人さんは現場で減りつつあり、若い職人さんは少ないのが顕著です。こうした現状を肌で感じるからこそ、多能工を育成する意義をとても大きく感じています。

多能工の今後の展望や課題を教えてください。
課題は「多能工を増やす仕組みづくり」ですね。多能工を増やすことで、技術者不足の解消ができればいいのですが。現在の2名に技能実習生4名が加わることが決まっていますが、さらに今後は多能工育成の学校をつくるなど、何らかの手法で増やしていくことができれば、より満足度の高いリノベーションサービスの提供につながると思います。自社以外の様々な現場にも多能工を派遣して、業界に貢献できるようにしていければ、とも考えています。

やってみてわかったことは「職人って楽しい」ということ 

学生時代に地域文化を研究していたそうですが、それが今につながっているのですか。
過疎地域の町おこしを主なテーマにして研究に取り組んでいました。地方には空き家が多く、社会的な課題として捉えていました。その後、リノベーションで魅力的になった家や店舗、様々なインテリアのゲストハウスなどを旅行で訪れたことがきっかけで、建築に興味を持つようになりました。
新築の注文住宅にも興味がありましたが、やはり数多くの空き家を目にしていたこともあり、リノベーションこそが、そうした課題解決の手段として有効であることに気づいたわけです。
元々「自分好みのインテリア空間で毎日を楽しく過ごしたい」と考えていた自分にとって、そうした魅力的な空間を提供しているリノベーション会社で働けたらと考えるようになりました。

リノベるで多能工となった自分をどう思いますか。
リノベるに入社したのは、徹底的にお客様に寄り添い、素敵な暮らしを一緒に作っていくスタイルにとても魅力を感じたからです。営業職としてリノベるのサービスをご提供できればと考えていましたが、まさか、多能工という全く異なる道に足を踏み入れるとは!という感じですね。「知らないことを知りたい」という好奇心と「成り行き」で、こうなったというのもありますが(笑)。

今、楽しいですか?
はい。やってみてわかったことが、「職人って楽しい」ということ。ちょっとした塗装や家具のDIY程度は、実家にいた頃から経験がありましたが、多能工となった今では、できることも格段に増えて、休日にはよく友人のDIYを手伝っていますね。手を動かすことで自分が成長していることも実感しています。
引き渡し後のアフターサービスで追加工事が必要な場合、リノベーションの詳細な内容や構造を把握した上でお客様にご提案・ご説明ができますし、例えば「壁を一面だけ塗りたい」というお客様の相談に乗れるようになりました。暮らしていくうちに出てくる「ここをちょっと変えたい」というプチリノベの要望にも、追加で対応できるようにしていければと考えています。

自分の成長とお客様の満足がつながっているんですね。
そうですね。とてもやりがいのある仕事だと感じます。

 

設計・施工部部長に聞く、「多能工」育成が必須である背景

 リノべるが「多能工育成プロジェクト」をスタートさせた背景には、どんな事情があるのでしょうか。リノベる設計・施工部部長の安江浩に聞きました。
とにかく職人さんが不足しています。
若い人が現場に入ってこないため高齢化する一方で、50~60代の職人さんばかりというのが実情です。今後、10年後、20年後には人材が枯渇し、リノベーションの受注自体は堅調なのに「つくり手がいない」という状況に陥って、業界全体が弱体化するのではという危機感があります。
そうした背景から、リノベるでは、企業理念の一つである「産業に対する約束」において、リノベーション業界を支える次世代の人材育成こそが非常に重要な課題だと認識しています。

多能工は、そうした人材不足を解決すると期待できるのでしょうか。
リノベーションの現場には、大工さん、塗装職人さんなど多様な領域の職人さんが必要です。ただ、それぞれが担う範囲が決まっているため、電気業者さんが入らないと大工さんの手が止まるなど“人材待ち”が理由で工期が伸びてしまう状況も発生しています。
そうした事態を解決する手法の一つとして、幅広い分野をカバーすることのできる「多能工」が有効だと考えています。ただし多能工育成といっても、1人で全部の工程を担える人材をめざすのは非常に時間とコストがかかります。まずは現場のムダを減らし、適正なコストでリノベーションをお客様に提供できるよう、いろんなことを少しずつできる人の育成に取り組んでいます。

多能工の試みを始めて2年ほど経ちましたが、現状はいかがですか。
若手メンバーが多能工として現場作業を担いつつ、現場に必要とされるのはどんな人材なのか、どうしたら育てられるのかを探っている状況です。現場の職人さんに育てて頂いていますが、一つの職種を覚えるだけでも1~2ヶ月はかかります。現在、星取表を作成し、カリキュラム化しているところです。

技能実習生の受け入れ体制づくりは、新たな挑戦ですね。
現場では「どんな職種の組み合わせが必要とされるか」も探っています。現場監督も不足気味なので、細かい作業や情報伝達も含めた監督補助の業務を担うことも考えています。
技能実習生の受け入れでは、言語の面でコミュニケーションが難しい外国の方に、現場の仕事をどう教えるかということにも取り組みつつあります。

リノべるにとって、多能工を育成するメリットは大きいのでしょうか。
リノべるは、自由度が高く豊富なバリエーションのリノベーションを提供しています。規格化された新築住宅のように画一的なものではなく、リノべるのリノベーションは一つ一つがオーダーメイド。お客様のこだわりを形にするには、現場で手を動かす人とのコミュニケーションが重要で、マルチに工事に携わる多能工が、お客様の要望に的確に応えられるようになることが必要だと考えます。

良いものづくりのためには職人の育成が必須ということですね。
ヨーロッパのアパレル産業は、デザインが優れているだけでなく、つくり手の技術が優れており、作品にはその技術力が反映されています。そしてそれらが豊かな服飾文化を生み出している。
家づくりも同じで、つくり手の技術が向上することで、豊かな住文化を形成することにつながると考えます。多能工になりたい人を増やすには、待遇は勿論のこと、職人の社会的地位を上げていくことも必要と考えています。

多能工育成は今後、リノベーション業界で一般化していくのでしょうか。
ある程度の企業規模・体力がないと育成は難しいと思います。リノベるも、現在の規模となったから挑戦できること。今後は、多能工育成の学校の設立や、他社への人材派遣・マッチング事業の可能性も考えたいですね。多能工を育成することで、人材が枯渇しつつある危機的状況を改善し、ミッションを具現化してまいります。

撮影:白根美恵

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