【vol.45】住まいづくりはテクノロジーでどう変わる? AI(機械学習)出身のプロダクトマネージャーが、リノベーションに見た可能性

2019.12.26
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【vol.45】住まいづくりはテクノロジーでどう変わる? AI(機械学習)出身のプロダクトマネージャーが、リノベーションに見た可能性

リノベるのミッションには「産業との約束」というコミットメントがあり、そこには「テクノロジーとアイデアをもって課題を解決」という一文があります。その実現に向けて、いま当社がどんなことに挑戦しようとしているのか――。新たにプロダクト本部にジョインした照屋遼のインタビューを通じて、その取り組みの一部をお伝えします。

照屋遼 
リノベる株式会社 プロダクト本部 プロダクトマネジメント1部 部長
英国ラッセル・グループの大学を卒業。業務・ITコンサルティング系のスタートアップに従事後、オンラインゲーム企業や自身のスタートアップでプロダクト開発、新規事業、法人経営を経験。前職では画像系AI(機械学習)コンサルタントとして活躍し、2019年にリノベる株式会社へ参画。

入社の決め手は「そこに手つかずの課題があったから」

リノベるが一番「カオス」だった

もともと住宅業界の人間でも、リノベーションについて知識があったわけでもなく臨んだ面接で話を聞いて、180度イメージが変わりました。リノベーションビジネスと「リノベる。」というサービスの現状と課題を聞いて、これは「面白そうだ」と。

誤解を恐れず言うと、数社からオファーをいただいたなかで、最も”めんどくさそう”だったのがリノベるでした。具体的には大きく二つ。一つは、テクノロジーによる課題解決が難しい領域であること。行動パターンを正規化しやすい領域であればテクノロジーを当てはめやすいのですが、建築・建設産業、特にリノベーションでは、セールス、設計、施工と非常に多くの部分を人に依存しておりパターン化しづらい。ゆえに他の産業に比べてテクノロジー化が遅れているのだと思うのですが、この課題をどう解いていくか、なかなか面白そうだと感じました。

もう一つは、サービスを担う人材の多様性です。リノベるでは、営業、設計、施工管理とさまざまな分野と価値観を持つ人たちが、一つの目的に向かって協働しているんです。周囲のスタートアップをみるとほとんどがIT畑の人間ばかりで、そこには共通言語が存在しています。しかし、リノベるにはそれがなく良くも悪くも複雑。この課題を解くのも面白そうだと感じました。

ユーザーとの距離がとにかく近い

前職の PKSHA Technology でもそうでしたが、テクノロジー畑にいると“ユーザーが遠い”ことに悩まされることが多くあります。例えばeコマースであればそのプラットフォーム上に消費者が存在しますが、消費者は本当のことを教えてはくれない。だから、どうにかデータからヒントを拾って、生の声にふれる機会を作ってとにかく聞いて、そこからなんとか本質を掴まなくてはなりません。

一方でリノベるの場合は、設計者や施工管理者等が活用するBtoBのプロダクトと、その先にいるリノベーションユーザー(お客さま)向けのBtoBtoCのプロダクトと大きく2パターンのプロダクトがありますが、いずれもユーザーとの距離がかなり近いです。ユーザーの姿や使ったときの反応・表情を、自分の目で直に見ることができる。そこは他のITスタートアップと比べても非常にユニークな部分ですね。作り手としてプロダクトに携わる人間にとっては、醍醐味になるところです。ユーザーがすぐそばにいるので、ちょっと事実関係が分からないというときにも、「じゃあ明日、現場に行ってみようか」となる。このスピード感は魅力ですね。

新プロダクトsugataが目指す世界

リノベーションの“大変さ”を”楽しさ”に

先日プレスリリースを出しましたが、2020年1月末にsugata(スガタ)というプロダクトをローンチ予定です。自分でドアノブ1つから選べる自由設計は魅力ではありながら、選ぶことを負担に感じる人も多いものです。そうしたリノベーション体験を、「スマートに」「楽しく」しようというのがコンセプトです。

 

リノベーションでは、プランニング段階で多くの写真や事例を見ながら理想のイメージを膨らませ、担当のコーディネーターや設計者と膝を突き合わせてそれを具体化していくことになるのですが、これまでそのプロセスがお客様にとって負担となっているケースもありました。そうした課題を、リノベるの豊富なワンストップリノベーション実績をベースに“型化”し、お客様のお好みに合うテイストをレコメンドすることによって、新たな体験価値に転化しようという考えです。

sugataにアクセスしていただき、最初に自分の好きな空間の写真を選んでいただく。そうすると、好みにあったデザインテイストや部材・パーツの組み合わせが自動的に提案されます。提案された内容はカスタマイズでき、オプションからさらに好みのデザインを選んでいただくと、自然な流れで理想の住まいのイメージが完成。概算のお見積りも、その場で確認することができます。sugataが提案するデザインはショールームで再現されていますので、サービスの流れとしては細かな部分など実物を見て確認することも可能です。

 

一人ひとりに最適化したリノベーション体験を提供する

sugataは言うなれば、リノベーション体験を場所と時間の制約から解放するプロダクトです。その意味でも、まずはイメージの実現をお手元の端末でしていただくというところからはじめ、例えば画像を通じたテイスト提案の精度や品質の向上、部材・パーツや、その他オプションの追加や入れ替えにより、無理なく選択肢が広がるようにしていきます。さらにアプリケーション上の表現力やリアル空間との連携を強化することで、より理想の空間をイメージしやすくしていく予定です。

そして将来的には、これを産業全体を支えるプラットフォームとして、リノベる以外の事業者に向けて展開することも視野に入れています。このような話をすると、リノベるの特長が希薄化してしまうのではと指摘されることもあるのですが、私はそうはならないと確信しています。人と機械のバランスの話になりますが、大前提として、機械には“文脈”を理解し、クリエイティブな提案をするのが苦手です。住まいづくりにおいては、お客様とお話するなかでたとえば将来の家族構成を想像しながら「こんな間取りがいいのでは?」と提案するなど、文脈を捉えた想像や判断が無数に求められます。こうした、お客様の人生の文脈を理解してそれを設計に落とし込むといった仕事は人がやるべきことです。ただし、大まかな条件がある程度絞れれば、そこから先は自動化できる部分もあります。何を人がやるべきで、何をテクノロジーで自動化すべきか、その判断やチューニングこそがこれからの時代の価値であり、リノベるの強みになっていくポイントだと考えています。

システムやツールという技術は、いずれ汎用化されていくものです。たとえばeコマースの世界ではAmazonの強さが圧倒的ですが、Amazonが活用している一つ一つの技術はアクセスできない存在ではありません。市場にはどの技術を“どう使うか”で価値を出し、その結果トッププレイヤーになっている企業が多く存在します。

リノベーション市場も同様です。アクセスできる情報や技術にどんどん差がなくなっていくなかで、その活用の仕方がうまい会社が、最終的にお客様に価値を提供することができる。そしてその価値とは「人とテクノロジーとの協奏で、目の前のお客様に最適な体験を提供できる」ということに尽きると思っています。

建築・建設×テクノロジーをリードする存在に

設計・施工まで担うリノベるだからこそのプロダクトを

今回のsugataのリリースはあくまで第一歩であり、今後さまざまなプロダクトを揃えていく予定です。もちろん、リノベるがやる意味のある分野にフォーカスをしていきます。一つ例をあげると、私たちの特徴であり大きな強みの一つが、リノベーションのコーディネートだけでなく設計・施工までカバーしていることです。リノベーションの“現場”を知る私たちだからこそ見えている「負の解決」に注力していきたいと考えています。例えば一般的なプロジェクト管理ツールのようなものを、車輪の再発明として当社が手がけることはおそらくないでしょう。我々は、より現場の課題解決に注力していきます。具体的なお話はまだオープンにできないのですが、私も今いろいろと現場を回らせていただき、仮説を検証しながら実現をしているところです。

国内外・異業界の事例に学ぶ

将来の展開として個人的に注目しているのは、やはり画像領域でしょうか。画像系の自動化は、リノベーションにおいても大いに可能性のある分野です。

もう一つ、先ほどお話しした「人と技術をいかにマージするか」という問いにどう答えを出すのかは常に気になるところです。異業界のケースになりますが、米国にスティッチ・フィックスという企業があります。ファッションECを展開しているのですが、そのサービスはAIを使ったパーソナル・スタイリングをベースにしています。いくつかの質問に答えると、好みにあうテイストをAIが判別したあとに、人間のスタイリストが「こういう服がおすすめですよ」と提案します。ここではsugataとは違う形で、機械の苦手とする“文脈を捉える”部分を人間が担うように設計されている。このような「技術と人間の境目が溶けて一つになったサービス」が、建築・建設分野にもマッチするのではないかと見ています。

CES 2020への期待

新年明けてすぐになりますが、CES(米国で開催される世界最大の家電・IT見本市)にも足を運びます。目的は、スマートホーム関連の協業先や可能性あるプロダクトを見つけることが一つ。もう一つは、先ほどのスティッチ・フィックスのように、ジャンルを問わず技術とサービスの行く先をを掴むことです。私たちが目を向けている方向に、事例をつくっている会社が世界にはいくつかあります。画像技術や機械学習を使ったサービスや、業者とユーザーをつなぐマーケットプレイス、プライバシーに配慮したセキュリティデバイス、ロボット家具など、幅広く情報収集しています。

リノベるはこれまでワンストップリノベーションの実績という点を強みにしてきた会社ですが、これからはより一層テクノロジー領域においても存在感を発揮していきたいですし、業界をリードする立場として、そうならなければならないという使命感もあります。プロダクトに携わる一人として、sugataのスピーディな展開や新たなプロダクトのリリースという形で、成果をお見せしていけたらと思っています。

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