メルカリ、マネーフォワード と似た空気を感じる――リノベるをハンズオンで支える三井物産の視点

2019.07.25
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メルカリ、マネーフォワード と似た空気を感じる――リノベるをハンズオンで支える三井物産の視点

2017年、リノベるは三井物産(株)から資金調達を実施。以来、三井物産からは人材出向も含め積極的なサポートをいただいています。三井物産がリノベるという会社をどう捉え、その将来にどのような可能性を見ているのか――メルカリ、マネーフォワードなど日本を代表するスタートアップへの投資を指揮してきた、ICT事業本部 松井敏行氏と、齊藤憲朗氏に語っていただきました。

松井敏行 Toshiyuki Matsui

井物産入社以来、金融事業、ICT事業に従事。近年はFintech・EC分野の投資、新規事業立ち上げに携わる。

齊藤憲朗 Noriaki Saito

監査法人、投資銀行を経て、約10年前より三井物産に勤務。日米欧中のEC、シェアリングエコノミー、フィンテック等、先端領域での事業開拓に携わる、物産きっての成長請負人。

リノベるの第一印象は?

松井

リノベるとは2017年からのお付き合いになりますが、そもそも不動産はIT化が遅れている分野だと言われます。不動産テックとカテゴライズされるプレイヤーが増えてはいますが、本質的にテックカンパニーと呼ぶにふさわしい企業は実はそれほど多くはないのではと感じていました。その点、リノベるの場合は、本当にテックを活用したおもしろい会社だなという印象を持ちましたね。

齊藤

三井物産としては今後より一層、世の中の産業に刺さりこむプラットフォーム的な立ち位置をとっていくべきであり、協業や出資を考える際に、衣食住に関わるプレイヤーを幅広く見たうえで、プラットフォームとしての可能性をもつ企業を探している認識です。そのなかで、私はリノベるに「シェアリングプラットフォーム」としての可能性を感じました。個人的な意見ですが、リノベるのサービスは「Uber」に近いとも思っています。

松井

どういうことですか?

齊藤

Uber やLyft、その他各国のさまざまな類似サービスを見てきて、リノベると3つの共通点があると思っています。

1つは、ユーザー視点での共通性。Uberの世界観は、クリックひとつで目的地に連れて行ってくれるというものです。これをリノベるに置き換えると、自分だけの住まいという目的地に、ワンストップで導いてくれる、ということになる。まさにUber的な世界観ですよね。

2点目は、サービス供給者側の視点にも共通性があります。リノベるのサービスは、世の中の不動産仲介業者や施工業者、設計業者、ローン業者……こうしたプレイヤーを束ね、余っているアセットを活用してユーザーに提供するというものです。そこに新たな雇用が生まれ、サービスも生まれます。これも、世の中に余剰となっているクルマを束ね、ドライバーの新たな雇用を生んでサービス提供していくというUberのモデルと一致します。

そして3点目は、社会に対するインパクト。遊休資産を、新たな価値に転化している点です。Uberの場合はそれがクルマであり、リノベるの場合は中古住宅や設計・施工・ローンであると。誰も見向きもせず世の中に埋もれている資産やケイパビリティ―を、プラットフォーマーとして再定義することで新たな価値を創造し、さらにそれをユーザーに手間をかけることなくマッチングさせる。社会的な意義の大きさという点でも共通していると思います。

松井

なるほど、その視点はおもしろいですね。社会的意義の大きさは、私も特に重視しているポイントです。業界構造や日本の住宅文化がもともと木と紙の文化だったことも関係しているのかもしれませんが、日本人の住まい観にはいまだ「築20年=古い」というイメージが根強く残っていますよね。しかし、この鉄筋コンクリートの時代に、そのイメージはもはやただの幻想に過ぎません。リノベるのサービスはまさにこのギャップを埋めるものだと見ることもできますよね。エコの観点からみても非常に社会性のある事業だと認識しています。

一方、いくら社会的意義が大きいといっても、ビジネス的に成立していなければ意味はありません。この点でもリノベるは、ユニットエコノミクスでしっかりと収益を出せる構造になっている。これは素晴らしいですね。

齊藤

まさに、その通りだと思います。赤字のまま上場するベンチャー企業が少なくない中で、リノベるはすでに黒字を達成しているんですよね。黒字化しないと、当然ながらビジネスはゴーイング・コンサーンを保てません。その意味でも非常に素晴らしいことだと思います。

リノベるの強みは「人」にある

松井

それから、実はこれが一番大きいと思っているのですが、リノベるは「人がいい」。以前、マネーフォワード社に出資させていただいたとき、まだ40人〜50人規模だったかと記憶していますが、当時のマネーフォワード社内の勢いや雰囲気に近いものを感じています。皆さんピュア。純粋に仕事を楽しんでいる。

代表の山下さんも、周囲の話を素直に受け入れた上で、改善すべきはするし残すところは残す、これを真摯に徹底していますよね。相手が投資家であれ株主であれ社員であれ、このスタンスを保って対峙されている点は、私が見てきたさまざまな企業のなかでも、特にうまくいっている会社に共通するポイントの一つだと思っています。

齊藤さんは、リノベるに常駐して社内の様子をより近く感じているかと思いますが、いかがですか?

齊藤

まさに松井さんがおっしゃられた「人」の魅力は私も感じているところですね。組織という観点では、リノベるには大きく2つの特徴があると思っていて。1つは山下さんが作り上げてきた企業文化です。山下さんご自身が若い頃に大変ご苦労をされ、小さい家に住んでおられたと。子どもながらに「世の中みんな同じ大きさの部屋に住んでいればいいのにな」と思っておられたそうです。そこからいろいろなご経験をされ、ゼネコンに入り、自分が立ち退きの交渉をしたおばあちゃんから「騙された」と涙ながらに責められるという強烈な体験があって。ご苦労をされてきたぶん、住まいを含めた“暮らし”に対する思いが強いんですよね。それがいま、リノベるの企業文化として、お客さまにとことん寄り添ってリノベーションするところに結実している。

ワンストップリノベーションは、非常に手間のかかる仕事です。物件を探して、設計して、施工して、ローンをつけて。業界では「絶対に儲からない」と言われていたところを、リノベるは信念でやり抜いた。お客さまに寄り添うことから逃げることなくやり続けてきたからこそ、実際にお客さまがついてきた。

会社によっては、企業文化というより「テックで攻めるぞ!」と勢いだけでやってしまっているところも実は少なくありません。リノベるの場合は、もちろんテックもあるのですが、何よりもプリンシプルの部分。人に寄り添ってという、原点というかカルチャーの部分ですね。これが素晴らしいなと。

2つ目は、スタッフも素晴らしい人が多いなと感じています。業界の特性なのかもしれませんが、この「人に関わる」「寄り添う」ところを、スタッフ皆さんがご理解されている。「このお客さまは5人家族だけど、予算的に50平米の物件しか買えない」「どうすれば、この人らしい暮らしができるのか」といったところを、一生懸命に悩んで、考えて作っています。

ともすれば、何を非効率なことをやっているんだと。経営目線で考えると、時間をかけなくていいから流してやってくれと言いたくなってしまいかねないところですが、でもリノベるの文化は人に寄り添うところにあって、それを現場のスタッフが徹底して実践しているわけです。これでは、経営サイドとしても何も言えないですよ(笑)。

松井

やっぱり人なんですよね。テックだなんだと言っても、結局はそこなんです。

コーディネーターとデザイナーでチームでプレゼンテーションを全社員の前で行う Story Award(最もかしこく素敵な暮らしのストーリーを生み出したチームに贈られる賞)

今後の課題は? 組織づくりと認知拡大

齊藤

逆に課題があるとすれば、会社の成長段階に応じた組織のケイパビリティ―の向上でしょうか。

松井

どういう意味ですか?

齊藤

たとえば経営執行会議で、皆さん言いたいことをいいます。率直な意見が出ることの良さはもちろんありますが、ある意味活発すぎて収集がつかなくなるというか(笑)。自由闊達に意見を言う雰囲気を大切にしつつも、企業の成長フェーズに見合った効率的な組織運営や役割分担が求められるのだと思います。

松井

必要以上にきちきちしすぎた官僚組織にすることなく、今の組織規模にあった仕組みを整えたいところですよね。事業面では、どんな課題を感じていますか?

齊藤

認知が、最大の課題だと思っています。リノベーションを知らない人がまだまだ多いんです。実は私も、リノベるに関わるようになるまでリノベーションという選択肢の存在を認識していませんでした。新築マンションで、似たようなハコで、似たような間取りで。多くの人が、何ら疑問を感じることなく、その選択肢を選んでいるのが現状だと思います。なぜなら、それしか知らないからです。

我々は、リノベーションという選択肢の存在を広めていかなければいけない。どうやって広めようかといったときに、自前でやるにはいちベンチャー企業として限界があるのも事実ですし、そもそも我々が目指しているのはプラットフォームです。リノベーション市場を自分たちで囲い込む意図はまったくなく、むしろこの仕組みをオープン化していくべきだと考えています。

具体的には、ワンストップリノベーションで自分の理想の住まいが手に入るという世界観を、不動産事業者さんや工務店さんなど各地域・地方のプレイヤーと積極的にシェアしていく。ワンストップリノベーションの仕組み自体をプラットフォーマーとして提供し、世の中に広めていくということです。多くの人にこの価値観に早く気付いていただきたいですし、共感してくださる事業者さんにはどんどん乗ってきていただきたいと思っています。

中古の宝石物件を購入し、自分らしくリノベーションする  リノベる。のかしこく素敵なワンストップリノベーション

松井

不動産価格全体が加熱してしまっているせいもあって、新築の価格が高止まりしている。潮目としては、チャンスだと言えますよね。

今後の課題も含めてですが、そもそもリノベるが理想とするサービス像がどんなものなのか。自社に多様なデザイナーを抱え、手づくり感を大事に、いろいろなものを自分たちの手で作っていくことに高い優先順位を置くのだとするならば、必ずしも規模を追うことが正解ではないでしょう。小ぶりながらも満足度の高い仕事を続けていくのも、一つの選択肢だと思います。

そうではなく規模感を追求していくのであれば、パートナー企業への展開が可能なサービスのフォーマット化や、レベニューシェアモデルの構築が必要になってくると思っています。ファイナンスサービスを付加することによって、リカーリングレベニュー化を実現する方法もありますし、B2B分野で規模感を狙っていく筋もあります。

齊藤

リノベるのブランドを積み上げ、マーケットリーダーとして市場を作っていく必要性を強く感じています。実際にリノベーションするとなったときには近所の工務店に頼んでもいいわけですが、とはいえ「誰に頼んだらいいの?」「大丈夫なの?」「アフターサービスも含めてやってくれるの?」といった不安感がものすごくあるんですよね。地場の事業者とのパートナーリングの話も出ましたが、その不安を解消するのが、リノベるのブランドです。リノベるに頼めば、ワンストップで、しっかり責任をもっていいデザインの住まいを作ってくれると。

リノベーションという選択肢は、現代の、個人が自分らしい生き方を求める時代感ともマッチしていると思っています。必ずしも仕事が人生のすべてではないという認識が一般化していくなかで、“リビング”というものをもうちょっと深掘りしてもいいのではと。そのためのツールを、リノベるが提供するということです。

三井物産×リノベる、シナジーの最大化を

松井

三井物産としても、より積極的なサポートをしていきます。我々のアセット、ネットワークをリノベるにも大いにご活用いただきたい。具体的には、不動産事業者や金融系の事業者との提携であるとか、共同で新しい会社をつくるとか、そうした部分で貢献できるかなと思っています。もちろん、国内外のテックカンパニーへのアクセスも同様です。

齊藤

まずは三井物産に、リノベるのファーストユーザーになってもらいたいですね。三井物産の社員の皆さんに、リノベるのリノベーションサービスを使っていただきたいなと。体験してこそ価値が理解できると思うので。インターネットサービス事業部の皆さんは、ぜひマストでお願いします(笑)。

松井

いや、大いにありですね。

それ以外にも当社もしくはお取引様が保有する社宅の一棟まるごとリノベーションをお願いするのもあると思いますし、オフィスビルの一棟リノベーションを共同でプロデュースという方向性もあり得そうです。全方位的にシナジーを生んでいきたいですね。

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