デザイン・設計パートナー つくる株式会社 代表取締役 伏見 貴之様

「リノベる。」メインの体制で築く、デザイナーの生存戦略。

「リノベる。」メインの体制で築く、デザイナーの生存戦略。

「リノべる。」のブランド立ち上げ初期からデザインパートナーとして活躍。現在もなお数多くの案件を手がける伏見貴之さん。フリーの設計者として個人事務所を営み、受注案件の8割近くが「リノべる。」からのもの。「リノべる。」案件中心の体制を構築することにより、浮き沈みのない安定した環境で、デザインと向き合うことができていると言う。伏見流の“リノべる。活用術”を伺った。

 

伏見 貴之 Takayuki Fushimi
つくる株式会社 代表取締役、インテリアデザイナー。店舗設計を手がける企業で管理職を勤めた後、フリーに転身。感度の高いデザインが社内外で多くの支持を集めるデザインパートナーの一人。プライベートでは3人のお子さんをもつ良きパパでもある。

図面だけ描いてくれ、という仕事なら受けるつもりはなかった。

「リノべる。」の仕事を受けるようになったのは2013年。当時はまだ住宅のリノベーションは珍しく、外注のデザイナーを積極的に募集している会社もほとんどありませんでした。

以前からフリーで設計をやっていましたが、メインは店舗内装です。住宅のデザインは「リノべる。」が初めて。テイスト自体は店舗とそう変わらないと感じていたので、その点、問題なくできそうだなという実感はありました。

懸念点があるとしたら、エンドユーザーさんと直接の打合せの経験がなかったこと。ですが、逆にそれが、「リノベる。」の案件を受けようと思った理由の一つでもありました。むしろ図面だけ描いてくれという仕事は受けたくなかったですね。

最終的にその家に住むことになるエンドさん本人と話さない限り、「どんな空間が理想なのか」を導き出すことはできないんじゃないかと思うんです。実際、リノベーションの買取再販会社さんやハウスメーカーさんのご依頼で図面を描くこともありますが、その場合どうしても予算や担当営業の方の感覚が、良し悪しの基準になってしまいます。「今の時代にあった空間はこれですよ」と言っても、それがエンドさんに響かなければ意味がないんじゃないかと、私はそう思うんですよね。

営業の工数・経費が発生しないという、圧倒的メリット。

継続的にいただく店舗案件も手がけてはいますが、今では8割近くが「リノべる。」からの仕事です。もはや、プラスアルファという位置付けではないんですよ。私の場合、「リノべる。」の仕事に特化して仕組みを作っています。

リノべる。にあわせてやっているほうがやりやすいですね。何より大きいのが、案件の「安定供給」です。フリーでやっていると、受注率は、3件お話があって1件決まるか決まらないか。一人で営業までやることになり、そこにかかる経費も無視できません。現在は、月に1〜2件ほど担当させていただいていますが、それが営業の工数なしに計算できるというのは間違いなく大きいです。

デザイナーが、デザインに集中できる仕組みがある。

“ルール”と“自由度”のバランスが適度にとれているのも、やりやすい理由の一つですね。例えば、「リノべる。」では、エンドユーザーさんとの打合せ回数が基本的に4回と決まっています。最初に打合せの日取りを決め、それにあわせて動いていく形になるので、イレギュラーが発生することがほとんどありません。スケジュール管理が圧倒的にしやすく、打合せ4回というルールは、自分の他の案件にも活用させていただいています。ちなみに、打合せもエンドさんが相手ですから土日が基本。プライベートの予定も立てやすく、妻と3人の子供との時間も犠牲にしなくてすみます(笑)。

一方で、細かなルールでがちがちに固められているわけでもありません。デザインテイストに関しても、「リノべる。」のベーシックラインという標準的な仕様はありつつも、何がなんでもその範囲におさねばというものでもなく。最終的なアウトプットは、デザイナーの裁量に委ねられています。誰がやっても同じにはならないんですよね。私の紹介で「リノべる。」の仕事をするようになった知人もいるのですが、彼のアウトプットと自分のとでは全然違うんですよ。デザイナーごとのテイストは、“納め”のところで必ず出てきます。

これまでに担当案件が50件以上は竣工していますが、自分の歩いている街に自分が作った家があるというのは、嬉しいものですね。お店の場合はいつかなくなってしまうものですが、住宅は残りますから。デザイナー冥利に尽きます。

さまざまなお客様から、新たな学びを得る喜び。

私の場合は、ゼロから建てるより、ハコが制限されているほうがやりやすいタイプのデザイナーなので、リノベーションは向いているなと感じます。しかも住宅のように70平米前後の案件だと、一人で全部管理して完結できるというのもポイントです。大規模案件よりそちらのほうが得意な方にも、「リノべる。」の仕事はあっていると思います。

そして何と言っても、エンドユーザーさんと直にお話ししたいかどうか。やはりここが一番の分かれ目かもしれません。いらっしゃるお客様は、一生に一度の感覚で住まいをお求めになるわけじゃないですか。しかも、自分で自分の家を作りたいという方ですから。ほとんど、その方の人生を背負っているようなもの。そんなご相談を何件も抱えることを、プレッシャーだと感じるか、楽しみだと感じるか。

メールなんて、それこそ毎日届くのも珍しくないわけですよ。お客様は24時間考えているんですから。そこがまた楽しいですよね。ものすごく勉強されている方も多くて、お客様から吸収させてもらっていることも、実はとても多いです。それが自分に付加されていって、他の案件にも活かされているという……デザイナーとしてキャリアを築いていく上での、良い循環ができているのかなと実感しています。

 

つくる株式会社

代表取締役 伏見 貴之

代表取締役 伏見 貴之